美術館未遂
「いつもとちがうことをしよう」
思い立った日曜日。
秋葉原に繰り出したり、飲んだりではない、いつもとちがうことをしようと思い立った。
いつもとちがうこと。
肘らしくないこと。
そうだ、美術館、行こう。
肘には芸術がわからぬ。
肘は、芸術をわかろうともしてこなかった。学生時代、美術の成績は5段階評価で3が取れればラッキー。
肘は芸術センスというものを持ち合わせてもいなければ、芸術に対し努力しようという気概さえ持ち合わせていなかった。
怠惰。芸術に関して肘は「怠惰」が服を着て歩いているといっても過言ではない。
美術館に行ったところで、展示品を眺めても何にも、ただの一つも理解はできず、「なるほどわからん」「解せぬ」しか言えないことは容易に想像がつく。
しかし、芸術に触れ「解せぬ!」とじたばたすることも、「いつもとちがうこと」としてまた一興ではないかと思い至った。
美術館。
普段出入りすることのない美術館。
校外学習で先生に連行されて以来の美術館。
緊張するが、「いつもとちがうことがしたい」ただその一心で門をくぐる。
チケット購入まで40分、入館まで30分待ち
美術館を後にした。
「解せぬ」とじたばたするために70分は待てなかった。
チケットブースまでは長蛇の列。肘のような芸術ドFランではなく、真に芸術を愛する方々が並んでいるに違いない。
場違い。そう、場違いに違いない。
近くのケーキ工場併設カフェで一息。
「いつもとちがうこと」は難しい。
ケーキの甘さに慰められた。
おわり!